2020/06/27 17:47


こちらは、コラージュとそれに合わせたダンボール製の額がセットになったコラージュ額絵「貴女は花」です。季節は夏の夜。額には菖蒲の花を描きました。よく見ると、葉先にはホタルがとまっています。男性の視線の先には何があるのでしょうか?



こちらは「貴男は木」。額には松。女性の視線の先には?


「貴女は花(左)」は「貴男は木(右)」と額縁を介して1つにつながります。額をつなげれば、男性と女性の視線の先に何があるのかわかる仕掛けです。そして、それぞれのタイトルと、額に描いた絵はリンクしています。額に描かれた絵は、それぞれのコラージュの人物の心を表現しているとも言えます。


などと書きましたが、実は2つの絵をつなげることは、制作途中に思いついたこと。最初、男性は黄色の紙に開いた穴を覗き込んでいるという設定でした。その穴の中には一体何があるのか? それは観た人それぞれが考えればよいと。しかし、女性バージョンを制作して、不意に2つを並べると、二人はまるで見つめ合っているように見えたのです。



それではと、額縁で絵をつなげることを思いつきました。すでに女性の方の額には丘を描いた後。ですがその丘をつなげれば、2つの絵は額縁を介して1つの世界を共有できるわけです。さらに、世界を膨らませるために男性側には菖蒲を、女性側には松を描き添えました。

それでは、この2つのコラージュに用いている男性と女性の絵は、元の絵ではどうなっていたのでしょうか? 2人は、別々の絵から切り抜かれたのでしょうか、それとも同じ絵から切り取られたのでしょうか?

2人は、江戸時代を代表する洋風画家の一人、亜欧堂田善の「両国図」から切り抜いたものです。そして、「両国図」という題名の通り、この絵の主人公はお相撲さん。切り抜いた2人は、脇役です。しかし、コラージュという技法によって、脇役の2人を主人公に変えてしまいました。いえ、もしかしたら、2人の心模様は実はこのコラージュで代弁されているのかもしれません…。ぜひ絵の全貌がどんなものか調べてみてください。


最後に、田善の絵にまつわるエピソードが少し面白いのでご紹介いたします。

私はこの絵を、展覧会のチラシで知りました。まず、江戸時代に洋風画が描かれていることに驚き、さらに、こっくりとした色味と独特の世界観に、日本画とは違う何とも不思議な魅力を感じました。

洋画家ではなく洋風画家。つまり、西洋絵画を見様見真似で表現したもので、絵具もえごま油や唐辛子を用いて手作りしていたということです。初めて西洋絵画を見た江戸の絵師たちは、大変な衝撃を受けたに違いなく、絵具を手作りしてでも描きたいと感じたのでしょう。それまで日本にはなかった表現スタイルで描くことの喜びと、日本において洋画の先駆者になることの興奮が、絵からも伝わると感じるのは私だけでしょうか?

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「貴女は花」

「貴男は木」


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